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活動報告

女性リーダー育成型 キックオフシンポジウム開催

2023年6月7日

2023年6月6日(火)に女性リーダー育成型キックオフシンポジウム「~飛躍的な女性上位職登用に挑むために~踏み出そう!女性・若手研究者の活躍促進に向かって」を日本医科大学教育棟講堂で開催しました。

日本医科大学と日本獣医生命科学大学、および全国ダイバーシティネットワーク参画機関の教職員併せて200名近いご参加をいただきました。

  • このキックオフシンポジウムでは、文部科学省ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)への採択を受けて、日本医科大学と日本獣医生命科学大学が掲げるビジョンが発信され、女性上位職登用の重要性とその推進に向けて必要なことが話し合われました。後半のパネルディスカッションでは、若手研究者も交え日本医科大学・日本獣医生命科学大学の現状と課題についてお話しいただきました。現場のリアルな意見をいただき、非常に有意義なディスカッションとなりました。


  • ~飛躍的な女性上位職登用に挑むために~ 
  • 踏み出そう!女性・若手研究者の活躍促進に向かって
  • 文部科学省ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)への採択を受けて、日本医科大学と日本獣医生命科学大学が掲げるビジョンを発信するキックオフシンポジウムを開催しました。なぜ飛躍的な女性上位職への登用が求められるのか、その推進に向けて必要なことなどについて話し合われました。
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  • はじめに文部科学省 科学技術・学術政策局 人材政策課 人材政策推進室長・高見暁子氏が挨拶し、「学術分野では研究力の向上が我が国最大の課題で、研究力の向上には多様性と女性の両立環境の向上を通じてモチベーションを活性化させることが欠かせない」と指摘。大学の女性教員割合は、2021年度時点で教授18.3%、准教授26.1%と10年前と比べて相当程度増加しているものの、政府目標は2025年までに各23%、30%を掲げているため更なる努力が必要な状況だとして、「牽引型で研究環境整備や採用促進してきたこれまでの成果を発展させて、上位職への女性登用がさらに充実することを願っています」と期待感を示しました。
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  • 次に、学校法人日本医科大学しあわせキャリア支援センター センター長・土佐眞美子氏より、日医大と日獣大で採択された女性リーダー育成型事業の具体的な内容が説明されました。同事業では、「女性の上位職登用」と「女性・若手研究者の育成」を両輪と捉え、同時に進めていくことになります。中でも、女性・若手研究者の育成を目指して「5年後キャリアサポート制度」が新たに始まりました。これについて、土佐氏は「将来有望な方々に対して、5年間で思い描くキャリアを実現できるようにそれぞれに合ったサポートを提供するということで、今までにはなかったかなり手厚いサポートになりました。こうしたことを通じて、私たちも現場の皆さんのニーズを吸い上げることができますので、一挙両得の制度だと思っています」と話しました。
  • さらに、スキルアップ支援やグローバル人材の育成についても継続的に取り組みながら、2027年度までに女性教授職比率25%(2021年度現在12%)を目指していくことになります。土佐氏は「非常に高い目標、挑戦ではありますが、何とかクリアできるように頑張ってまいります。取り組みはWebサイト等で情報を提供しておりますので、ぜひ皆様にご興味を持っていただき、取り組みを進めていくべくご協力をお願いいたします」と呼びかけました。
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  • この後、国立研究開発法人 科学技術振興機構 プログラム主管・山村 康子氏から「日本医科大学・日本獣医生命科学大学に期待すること」と題して、基調講演をいただきました。山村氏は、2006年から始まった文科省の女性研究者育成支援事業について、当初は離職の抑制や採用の促進に重きが置かれていたものが、次第に研究力の向上やリーダー育成へ軸足が移っていった経緯を説明。女性が進学や昇進によって上位に行くにつれて人数が絞られていくことを称した「水漏れパイプ(Leaky Pipeline)現象」に触れ、その原因としてアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)からの解放とワークライフバランスの推進を指摘しました。
  • 「夫はほんの一部しか家事育児に時間を割かない一方で、妻は正規雇用か非正規雇用かに関わらず、無償労働である家事育児に時間を割いています。これは、日本に顕著な固定的性別役割分担意識を示したものです。思い込みに対処するためには、まずは思い込みがあることを認識すること、次に思い込みから解放されたポジティブな経験をすること、さらには思い込みを介在させない仕組みや組織を構築することが大切です」
  • 「ワークライフバランスの推進も女性研究者の活躍促進にとって非常に重要で、来年度からは医師の働き方改革も本格的に始まります。ここで一つ強調したいのは、女性研究者にとっての働きやすさは、男性研究者にとっても働きやすい環境の構築につながるということです。はじめは女性が対象かもしれませんが、ライフイベントがあっても当たり前のように研究を継続することができたり、業績に見合った評価が実現するような環境ができたりするなど、将来的には男性にとっても非常に良いことになるのです」
  • では、女性の上位職登用に向けて具体的に何をすべきなのでしょうか。山村氏は▼両立支援▼タスクシフティングなどを通じた働き方改革による研究時間の捻出▼アンコンシャス・バイアスを介在させない仕組みや組織の構築▼(国内外での研究機会など)バイアスから解放されるポジティブな経験の提供――を挙げました。山村氏は最後に「日医大と日獣大では、学部の女子学生比率は高いものの、教授職比率が低いので、そこは頑張ってほしい。SDGs(国連持続可能な開発目標)でも、ジェンダー平等が掲げられています。世界に遅れないように取り組んでほしい」とエールを送りました。
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  • 日医大・弦間昭彦学長「飛躍的な女性上位職登用に挑戦するために」
  • 女性教授職比率が2021年度12%と比較的順調に高まり、女性・若手研究者支援が充実し、ダイバーシティ研究環境整備の意識が高まってきたこのタイミングで、さらに資源を投入することが適切と考えました。牽引型事業で実績が出た取り組みを強化するとともに、大きな目標達成への新たな取り組みを進めていきます。
  • 基本的な環境の整備や産学連携研究、女性研究者への研究費の補助・研究支援員の配置、産学連携研究については、牽引型事業を通じてかなり進められました。これに加えて、医学部の上位職が教育・研究・診療のすべてを行ってきた時代からの脱却を目指して、診療を評価するなど多様な教授の選任制度や、教育を中心とした教員制度を導入していきます。全てをフルにやる必要はなく、得意なことをやってもらうという趣旨で、上位職への女性の登用に向けての環境整備にもつながると期待しています。
    こうしてより一層世界へ羽ばたいていただくためには、グローバル人材の育成、研究スキルアップ、上位職への登用を進めていきますが、勤務時間短縮とチーム医療の徹底など働き方改革とも同時に進めていくことになります。
    女性リーダー育成型事業については、上位職への登用と女性・若手研究者の育成支援を車の両輪に据えて進めていきます。上位職登用では、ここ5年間の業績をリストアップして候補者を絞り込み、本人と上司への意思確認を経て実施するという、リストアップによるトップダウン方式を採用しました。公募ですと周知プロセスでロスが生じたり、先輩への遠慮が生じたり、内部変革を行いたい場合ばかりではないため、この方式を採用しました。具体的には、内部研究資金の優先的な配布や、チームによる共同作業を通じた育成支援を行っていきます。
    女性・若手研究者の育成支援では、5年後キャリアサポート制度を始めます。これは、今身近に迫っているライフイベント上の課題や問題に伴走しながら、長いスパンでの人生設計を考えながらモチベーションを維持してもらうために行います。助教から講師に向かう層、すなわち5年後の教授・准教授の内部候補を支援するもので、この層を厚くするとともに、業績を上げている若手の抜擢も目指しています。
    今回の事業は2025年以降に女性上位職の登用を加速させるための計画で、これによって2027年度に同25%を実現していきたいと思います。
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  • 日獣大・鈴木浩悦学長「多様性を活かし成長する大学を目指して」
  • 日本獣医生命科学大学は、敬譲相和という学是の下、獣医生命科学の多様な分野の研究に寄与することを目標としています。学部生の70%が女性で、大学院生も女性が60%にもかかわらず、教員は男性が75%を占めています。フィールドへの引率で女性教員に負担がかかり、大学運営で女性の目線が必要にもかかわらず上位職にいません。ロールモデルとしての女性教員が少ないと認識しています。最近、目安箱というものを設けて学生から意見を募集しているのですが、色々と気づかされています。
    2023年度の計画では、女性上位職の登用促進と女性・若手研究者育成を進めていきます。教育スキルも含めた育成とともに、研究環境の整備としては大学の付属牧場「富士アニマルファーム」での産学連携研究の強化も行っていきます。
  • 特任教授の任命も増やしていこうとしており、シェルターメディスン(動物保護施設における獣医療)担当の特任教授が就任しました。オーストラリアのクイーンズランド大学との協定に基づく連携も進めていきます。女性教員との意見交換会や女性研究者によるセミナーも実施しています。
  • 本事業を通じて、教授を2027年度26%にすることを目指していきます。 数値目標を掲げながらも、女性教員の力を借りて大学全体として良くなることを最終的な目標にしています。
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  • 飛躍的な女性上位職登用へ向き合うべき課題は?
  • シンポジウムの後半では、東京医科歯科大学でダイバーシティ研究環境の整備や女性上位職の育成を担当している同大副理事で学生支援・保険管理機構長の宮崎泰成氏をファシリテーターに迎えて、日医大と日獣大のダイバーシティ推進の責任者と若手研究者の方々によるパネルディスカッションを行いました。冒頭、宮崎氏より同大が2022年度から順天堂大学とともに進めている女性リーダー育成型事業「双発・飛翔プロジェクト」についてのご紹介がありました。3つの柱として▼上位職登用制度のブラッシュアップ▼キャリアアップの質の向上▼上位職ポストでの女性研究者の積極登用 を掲げ、このうち上位職登用制度のブラッシュアップとして、一定期間審査を伴った2階級昇進可能な制度などを導入。このほか、キャリアアップの質の向上では支援を受ける女性研究者側のニーズに即したオーダーメイド型の支援などを行ったり、上位職ポストでの女性研究者の積極的な登用につながるよう、女性研究者を登用した分野への研究資金の配分などといったインセンティブを付与していることなどについて説明されました。
  • パネルディスカッションでの主なやりとりは次の通り。
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  • ―― 飛躍的な女性上位職の登用に向けて、どのような課題を感じでいますか。
  • 土佐眞美子氏(学校法人日本医科大学しあわせキャリア支援センター センター長):大学に残る女性医師・研究者をいかに増やしていくかです。今年の本大学の入学者は、女性が51%になりました。これまでの取り組みでダイバーシティ研究環境実現への理解促進はできてきましたが、大学を選ぶ人は多くはありません。本学の学生が本学に残ってキャリアアップできるよう、環境の整備や魅力の発信を行っていく必要があると思っています。
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  • 植木美希氏(日本獣医生命科学大学ダイバーシティ推進委員会 委員長):女子学生は6割いるのに女性教員は2割にとどまっています。とはいえ、一人ひとりが活躍して研究力を向上できれば、数値目標は達成できると思います。事業を始めて5年目になりますが、本事業は、女性だけではなくすべての人の研究力向上につながることを理解してもらう必要があると痛感しています。 女性教員支援という言葉が独り歩きしてしまうのはダメで、粘り強い広報周知活動が大切です。その中で、大学院博士課程まで進学する女子学生を増加させることができればと考えています。
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  • ―― 学部学科によっても濃淡はあるかもしれません。若手研究者にとって、リーダーを目指したくなる職場とはどのようなものですか。
  • 恩田直美氏(日医大 呼吸器内科 助教):女性の入局者は増えてきていますが、リーダー職につく人がなかなかいません。自ら模範を示して結果を出し、若手のモチベーションを維持する力も必要となると、男性がつくべき、自分ではできないといった思い込みがあるように思います。人数が増えることでロールモデルも増えるはずですので、女性同士のネットワークや相談体制や、男女ともに産休・育休、早退などを取れる環境があると良いと思います。
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  • 藤原亜紀氏(日獣大 獣医学部獣医学科准教授):私の場合、学内でロールモデルが存在していない状況で、臨床と教育の両方を行っている方は10年以上不在です。博士課程に進学する女性は少ないですが、これもロールモデルが少ないから。博士課程進学者を増やさないと、上位職を増やすのは難しいと思います。一過性の支援ではなく、ライフイベント中も長期的に研究活動を支援してもらえる仕組みなど、長期的な支援で悪循環を断っていく必要があると思います。これは、女性だけの支援だけではありません。同職の男性がパートナーであるケースが多いので、男性も同じような支援が受けられれば、結果として女性支援につながります。
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  • ーー 一校でやるのではなく、面的に行うことも大切ですね。
  • JST山村氏:この事業では全国ネットワークが動いていて、年に一度シンポジウムを開催しており、幹事会もあります。ロールモデルもたくさん紹介されていますので、ぜひ?ウェブサイトを見てほしいですし、直接ご相談しても応じてくれるでしょう。この事業は成果が非常に分かりやすいので、ぜひ継続してほしい。文科省の事業によって大学の中もだいぶ変わってきましたが、仮に来年から事業がなくなってしまうとすれば、1,2年ですぐに元の状態に戻ってしまいかねない状況でもあります。
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  • 土佐氏:継続しなければたちまち元に戻ってしまうという危機感を持っています。そのためにはやはりインセンティブが必要ですね。例えば、医科歯科大の取り組みのように、女性研究者を上位職に登用する際には雇用枠を別に設ける、
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  • 植木氏:本学の場合は、日本医科大学と同じ方向で進みますので、一緒に進めていきたいと思っておりますし、学部学科を超えた女性教員のネットワークづくりもさらに進めていきたいと思います。宮崎氏:千葉大や女子医大など関東地方でJST事業をやっている他大学との情報共有の機会もぜひ活用していただければと思います。最後に、学校法人日本医科大学 坂本篤裕理事長が挨拶し、「本事業の重要性、ぜひ成し遂げなければならないということを再認識しました。最終目標の達成までとともに頑張っていきましょう」と呼びかけて閉会しました。

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